■旅行記 ”日本一周旅行” 12日目 : 北国旅行の締めくくり  (1996.08.19 Mon)

 もう明日には北海道を去ることは決めていた。フェリーも予約できたし、これ以上いるわけにもいかない。しかしそう思うとかえってのんびり出来るものである。今日は函館周辺を自動車で案内してもらった。
 自動車の中は実に理想的で合理的な懇談の場になる。もちろん一人は周囲に注意を払って運転しながらになってしまうが、大声で笑っても周囲を気にする必要もなく、また人気の喫茶店のように待ち行列からの視線を気にしなくてもいい。
 函館からどこまで東に向かったか正確に覚えてはいないけれど、あっという間だったように思える割には、函館から恵山(えさん)まで行き、そこからぐるっと海岸を回って大沼まで走った気がする。時間の経つのが本当にあっという間のドライブであった。
 大沼でのことはよく覚えている。やはり写真を撮り、何度も見ているから忘れなかったり思い出したりするものである。公園内を散策し、ペダル付きのボートに乗ったり、熱帯魚のいる水槽の中でしか見たことがなかったコウホネが一面に生い茂る池の写真を撮ったりして、北海道での最後であろうこのひと時を満喫していた。
 そう、「北海道旅行」としても十二分に満喫したものになった。正直、満喫しすぎた、と言っても過言ではない。しかしこうして楽しく過ごしながらも、明日からのことを「本当に日本一周なんて出来るのか?」と気にかけていた。
 大沼から函館の家に一旦戻った後、また出かけた。今度は五稜郭公園と函館山である。どちらももう夕方であまり時間が無かったとはいえ、行っておいてよかった。特に函館山は、始めはあまりに観光スポットめいているのでかえって敬遠していたけれど、あれだけの近距離と高さから函館の街がダイナミックに一望できるのには、正直声を上げて驚いた。両側の海岸線がきれいに湾曲しているだけでも優雅さを感じたし、ガラス越しでもなく障害物も無く一望できるのには心底感動した。
 帰宅したのは既に暗くなってからだったが、それから子供たちが楽しみにしていた花火で遊んだ。嫌と言うほど子供たちは大はしゃぎだったけれど、なんだかお祭りのようで僕自身も何か元気付けられた。僕は今まで、子供と接するのがあまり得意ではなかったのだけれど、この旅行を通じて、なんだか以前より自然にそれが出来るようになった気がした。一人で旅行をしていると、老若男女問わず、出会った人、笑って話をした人のすべてに感謝と愛着の念が湧くし、それ以前に、自分がいま一人であることで、こうした交流が自然に出来るのだろうと思った。これがもし家族旅行や恋人との旅行だったら、これほどまでに旅先で出会った人々と深く関わり合えなかっただろうと、北海道最後の夜をそんな清々しい気持ちで送ることが出来た。


大沼国定公園も暑かったけれど、関東の比ではないから過ごしやすかった。



国定の公園だけあってか静かで落ち着いた雰囲気だった。
水面に見えるのがコウホネの群生。


【走行距離】 本日:走行なし / 合計:3,213km
北海道函館市

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